5月は、誕生日やら記念日やらであわただしく、且つ何かと面倒な月。
とお互い思っているせいなのでしょうか、年々「普段と変わらずに過ごす・過ごしたい」傾向が強くなってきました。男女の仲なんて最初のうちこそどうであれ、「生活」というものを共にすると歳月とともにこうなるものなのでしょうね。(多分)
「プレゼント?お金だけ頂戴。自分で買ってくるから。」
といった感じでホントお互い「遠慮」というものがありません。重ね重ね言っちゃってますが「生活」というものを共にすると、いちいち遠慮してられなくなります。(多分)
と、そんなこんなではありましたが、うちの相方の誕生日には一応レストランを予約してあげました。ここLAには高級レストランが何軒かありますが、正統派フレンチよりもちょっとカリフォルニアテイストの入ったカジュアル&ライトな感じが好みらしい彼の意見を元に、今回選択したのが、世界的に権威のあるワイン専門誌「Wine Spectator」のGrand Awardにも選ばれたレストラン
Sona Restaurant。Owner ChefのDavid Myers氏は「Food & Wine Magazine」誌でBest New Chef of 2003や「Angeleno Magazine」誌などでRising Star Chefを受賞するなどLAではかなり有名なレストラン。
さらにこのレストランが人気であるもうひとつの理由として、フレンチのシェフであるMyers氏が、日本料理の「割烹」をコンセプトに料理にアプローチするというスタイルを掲げていることなのです。旬を大切にし、その土地でとれるオーガニックの食材を使用し、フレンチのテクニックで仕上げるという今まさに流行のスタイルですね。
さっそくメニューの方ですが、プリフィックスは「6 Course Découverte($89.00)」と「9 Course Spontanée($125.00)」の2つ。そしてアラカルトメニュー(FIRSTS/前菜, SECONDS/アントレ, THIRDS/デザート)というラインナップ。ウエイターが「このお店が初めてなら、お店の特徴でもあり、自慢のこの味を知るためにもとにかく9Courseがお勧めですよ」とのこと。コースには便利な「Wine Pairing($125.00)」もあったので「9 Course Spontanée」にプラス「Wine Pairing」もお願いすることに。
そしてコースの中で1番気に入ったのがこの「Sweetbreads, Morels, Fava Beans, Pickled Ramps, Red Wine Shallots, Ramp Sabayon」。生まれて初めて「Sweetbreads」と呼ばれる「仔牛の胸腺肉」というものを食べたのですが、これが本当に恐ろしいくらい美味!それにしてもスイートブレッドっていうのでパンなのかと思いきやフランス語でris de veau(リ・ド・ヴォー)というものらしく、仔牛の時にだけ存在する乳を消化するための酵素が出る内蔵の部分なんだそうです。とにかくフォアグラに限りなく近い旨さです。
「Seared Spice Tuna, Edamame, Coconut-Wasabi Emulsion, Micro Celery」
店自慢の長~いパルメザンスティックをぽりぽりとかじっていると、前菜その1が運ばれてきました。コースのスターターはいわゆる「まぐろのたたき」。枝豆やわさびを使ったソースなど、1品目からかなり日本の食材を意識しています。味付けも繊細。ペアリングのワインはもちろん白。このワインがまたすごくって「牡蠣」の味がするのですよホントに。びっくりです。
「Shrimp, Panzanilla(Parsley, Tarragon, Tomatoes, Shallots, Chives, Sherry Vin.), Goat Cheese, Dried Black Olive, Herb Emulsion」
2品目からは、それぞれ違う品をサーブしてくれます。これは相方の前菜その2の「えび」。ガラスの板皿に綺麗に盛り付けがされていて食欲をそそりますねえ。とにかくこのレストランのシェフのコンセプトである「Japanese Kappo」が一皿一皿に実に冴え渡っていたと思います。
「Kanpachi, Caramelized Cauliflower, Tonburi, Pickled Green Garlic, Cucumber, Salted Plum Puree」
これは私の前菜その2。ウエイターが「カンパーチーィカリパッチョオ~」と例によって発音。そうです日本のおさかな「カンパチ」の登場です。カンパチの刺身がミルフィーユ状態に重なっています。1枚1枚めくるとなかには見覚えのある懐かしい食材が!キャビアにも似たこのルックス!なんとここアメリカで「畑のキャビア」とも言われている秋田名物「とんぶり」に遭遇してしまいました!幼少時秋田に住んでいた私は、卵焼きやとろろにまぜてよく食べたものです。懐かしくて涙が出そうになりました。
「Chorizo Crusted Lobster, Spicy Tomato Marmelade, Jellied Lobster Consomme, Asparagus, Noilly Pratt Emulsion, Dried Chorizo, Spicy Greens」
これは相方の前菜その3である「ロブスター」。相方の場合、さっきもエビだったのでこれはウエイターのミスですねえ。と思いつつ、私の皿と取り替えてあげなかったのは例の「仔牛の胸腺肉」を独り占めしたかったからです。ごめんよ相方。こんな食い意地のはった鬼嫁で。
「Ocean Trout Confit, Curried Salmon Eggs, Fregola Sarda with Rhubarb, Curried Green Apple Puree, Watercress」
ウエイターが「サーモン」といって相方に持ってきたメイン魚料理編の一品。鮭が苦手な相方が私に交換を申し出たので鮭好きな私は快諾。見た目はサーモンそっくりだけど、ウエイターさんこれ違いますよ~トラウトですよ~、と心の中でつぶやく私。Rainbow Trout(ニジマス)は皆さんお馴染みの川魚ですが、この魚が海で養殖されると「Ocean Trout(オーシャントラウト)」と呼び名が変わって、体長も60cmを超える魚になるんだそうです。オーストラリアではこのトラウト、もとはサーモンの代用品だったらしいんですが、サーモンよりトラウトの方が脂の含有量も高くておいしく人気もあるんだとか。Confitという低温でじっくりと火を通す調理法はOcean Troutを美味しく食べるにはぴったりの方法らしいです。
「Miso Marinated Black Cod, White Soy Tofu Puree, Ganmodoki(Fried Tofu Ball), Pea Shoots, Peas」
これが相方のメイン魚料理編の「タラの味噌漬け」。魚を美味しくヘルシーに調理するには、日本の手法を使うのが1番と気付いたのでしょうねえ。しかも「がんもどき」までサイドに添えてあります。これは完全な日本料理の1品でしょう。魚に関しては、世界一うるさい民族であろう日本人の私たち。アメリカ人の魚に対する扱いは実に不満だらけではありますが、このように美味しいものを食べると本当にうれしくなってしまいます。
「Foie Gras Duo, Lemon Pound Cake, Foie Butter, Lemon Sparkles, Limoncello Granita」
これは2人共通の1品。ここからメイン肉料理編その1のはじまりです。まずはフレンチではお馴染みの食材「フォアグラ」。このフォアグラとレモンの香りの組み合わせは、一瞬「ん?」と思わせますが、これが実際食べてみるとなかなか合うのです。ここからペアリングのワインが赤に。白ワインは得意なのですが、実は赤ワインがちょっと苦手というか弱い私。歯や唇もタンニンで染まってドス黒くなりますしね。みなさんはデートのときなど赤ワインを飲んだあとはどうしていっらしゃるのでしょう???
「Forbidden Rice and Boudin Stuffed Rabbit, Caramelized Plantain, Beets, Parsley Root」
これは相方のメイン肉料理編その2である「うさぎ肉」です。あの臭いを思い出しただけでダメなので、相方にサーブされてホッとする私。肉の中に詰めてあるのが「Forbidden Rice」というお米。古代米のひとつである「紫黒米」です。英語名を直訳すると「禁じられた米」になるのがおもしろいですね。この紫黒米とうさぎ肉を詰めて「Boudin」 にした1品。「Boudin(ブーダン)」とはソーセージを意味するフランス語だそう。
「Poussin, Maitake Tempura, Hijiki Ginger Puree, Charred Shishito Vinaigrette」
これは私のメイン肉料理編その2。「仔鶏(Poussin)」です。卵からかえって500~600gぐらいまでの雌の雛鳥のことだそう。道理で肉質が柔らかいはず。フレンチの鶏肉にはこれまた、日本の食材を使ったものが添えてあります。まいたけの天ぷらに、しし唐のグリル、そしてひじきをピュレ状にしたソース。ひじきをソースにするなんて日本人ではなかなか思いつかない発想かも。
「Venison, Smoky Baba Ganoush, Cilantro Yogurt Sauce, Raw Grains Cereal」
そして最後の肉料理が登場。これは相方の「鹿肉(venison)」です。相方の肉料理は兎に鹿と「狩猟肉」が続きましたが、どれも気になるようなクセもなくとっても美味しくいただけたとのこと。素材自体の良さもさることながら、シェフのテクニックが素晴らしいおかげもあってのことなのでしょうね。
「Hanger Steak, Swiss Chard Wrapped Oxtail, Potato-Nori Pave, Furukakke」
これは私の最後の肉料理「サガリ肉のステーキ」です。サガリ(横隔膜)は食感が「今私は肉を食ってる~」という気分にさせてくれて好きな部位のひとつ。焼肉屋ではメニューにあれば必ずサガリを注文します。そしてコースの最後を締めくくったこの肉料理の驚くべきテクニックが、なんと「ふりかけ」を使っていること!ステーキの脇にパラパラとふりかけのツブツブが見えるのが分かりますか?これホントにふりかけなんですよ~! しかも「おかか」のふりかけ。サラダなどにふりかけをかけて使うという方法がどうやら西海岸あたりから始まったらしく、レストランではカルパッチョにふりかけをあしらったメニューが登場するなどちょっとした流行になっているみたいなんですが・・・日本人としてはビミョ~かも。
「Malt Chocolate Ice Cream Ball, Curried Rice Crispies, Diced Dates, Baby Banana, Grapefruit Campari Reduction Chocolate and Yuzu」
デザートはもちろんお約束のロウソクとチョコレートで書かれた「Happy Birthday」の文字入りプレート。いつもは甘いものを絶対食べない相方も、ニコニコ顔で食べてました。ロウソク&文字のおかげなのかー?! ちなみにこの球状になったIce Cream Ballはこの店のスイーツの特徴というか目玉なのだそうです。
帰り際にはお店からのお土産が。ギフトの箱のロゴに見覚えがあるなあと思ったら、なんとこのレストランのOwner Chef、David Myers氏の奥さんが経営する「
Boule」というフレンチペイストリーのお店の箱でした。それにしてもこのティファニーブルーってホントおしゃれに見えるから不思議ですよね。
中をあけてみると、焼き菓子がどっさりと入っていました。Financier, Cannelés de Bordeaux, Gateau Chocolat de Nancyなどなど、どれも一口食べると素材にいいものを使っているなあと思わせる風味があって、とっても美味しかったです。ここの焼き菓子だったら日本のデパチカのスイーツにも絶対負けないと思う!
コースに出てきた9品すべて完食し、ペアリングのワインもすべて飲み干しました。が、そのおかげで、かなり酔っ払いだった私。家に着いたころには私の胃の中は、コース後半部分が存在していませんでした(涙) ちなみにコース前半部分は見受けられなかったので多分ちゃんと消化できたんだと思います。
Sona Restaurant
401 N. La Cienega Blvd.
Los Angeles, CA 90048
Boule
420 N. La Cienega Blvd.
Los Angeles, CA 90048